「森伊蔵」「村尾」「魔王」焼酎”3M”飲み比べ
日本料理との相性という意味では、もしかすると日本酒の上をいくのではと思われる焼酎。ある企画にて”3M”と呼ばれる焼酎三種をテイスティングしました。その記録です。
例えば、私はお刺身と日本酒は、”相性”という意味では難しいと思っていますが、それは刺身の強さを支えるには、日本酒ではどうしても酸味と余韻が足りないと感じるからです。
→特に鯛が難しい。正直、「鯛のお刺身、普通にワサビに醤油」にピッタリの(鯛もお酒も共に美味しくなる)日本酒を見つけられません。私の経験では、愛知県の「菊鷹 山廃純米生」が理想に近かったのですが、廃業されました…。先日も柏屋のスタッフと取引先の酒屋さんとで「刺身に合う日本酒」の勉強会をしましたが、やっぱり難しい…。これが合うよという日本酒をご存知でしたら教えてください。
一方で、焼酎は蒸留酒であるが故の余韻の長さ、ドライな口当たり、そしてアルコールの強さが特徴で、その三つの要素でもって食材の個性に追随するイメージです。
個人的には焼酎6:水4の水割り、またはお湯割りがお料理と共に楽しむには一番だと思っております。
さて、「森伊蔵」「村尾」「魔王」飲み比べです。
一言で表現すると
ミネラルと清涼感、バランスの「森伊蔵」
とっても香ばしい!最も芋らしい強さの「村尾」
甘くて華やか、上品な「魔王」
といった感じでしょうか。
◆「森伊蔵」
〈香り〉
潮の風味や貝殻を思わせるミネラル、清涼感が特徴的。
〈味わい〉
焼酎としてはとても穏やかで滑らかな口当たり。その後、辛さを伴うドライな旨味が広がります。余韻はゆっくりと縦に伸びていくイメージ。
〈加水後〉
香りはミネラルのニュアンスが引き立ち、より爽やかに。味わいはより滑らかに。細く長く品よく伸びる余韻が本当に素晴らしい。
〈総評〉
清涼感があり、バランスに優れているので”飲みやすく”、万人が美味しいと感じるように思います。どの飲み方でもおいしくいただける万能タイプ。
◆「村尾」
〈香り〉
とても香ばしく、鉛筆の芯やキノコの香りなど、複雑な印象。個性的。
〈味わい〉
インパクトのある強くて鋭角な口当たり。中盤から後半にかけてドライな辛さ、強さが迫ってくるイメージ。一方で、余韻はそれほど伸びず、スーッと引いていきます。
〈加水後〉
香りは、香ばしさが溶け込み穏やかに。味わいも強さがそれなりに主張するものの、うまくまとまります。個人的にはこの村尾が加水に最も向いていると思います。
〈総評〉
最も芋らしく、強くてしっかりとした焼酎。この香ばしさ、複雑さに慣れている方は他の二つの焼酎を物足りないと感じることでしょう。この強さが、加水によって見事にまとまる様は爽快。水割り、お湯割向き。
◆「魔王」
〈香り〉
華やかな香り。桃やライチなどの甘い果実の香りが見え隠れ。
〈味わい〉
この三種の中でもっとも甘く、少しとろりとしたイメージ。加えて、最もエレガントで線が細く上品。
〈加水後〉
とても焼酎とは思えない心地良い甘い香りが軽やかに広がります。一方で、味わいはやや線が細いこともあり、加水することでちょっと単調なイメージに。
〈総評〉
この華やかさと甘さは清酒用の黄麹を使用するからでしょうか。とても上品な香りと味わい。ストレートかロック向き。
とても素敵なテイスティングでした。