どうして同じ名前のワインがたくさんあるの?~ブルゴーニュワインの基本

ボルドーはシャトー〇〇って感じでまだわかるのだけど、ブルゴーニュは同じ名前の違うラベルのワインがたくさんあってとっても難しい。 脱ワイン初心者、ブルゴーニュワインを楽しむための基本です。

『例えば、Gevrey‒Chambertinってワインがたくさんあって、どう違うのかわからないんです』


こちらはアルマン・ルソーさんが造ったGevrey‒Chambertin(ジュヴレ・シャンベルタン)
※ラベル下部にあるDOMAINEとはドメーヌと読み、ワイン生産者を指します。


こちらはデュガ・ピィさんのGevrey‒Chambertin


こちらはブリューノ・クレールさんのGevrey‒Chambertin。さらに、Gevrey‒Chambertin村にあるClos St Jacques(クロ・サン・ジャック)という名の畑のブドウから造られたワイン。
※ブルゴーニュの場合、村の名前の下に書かれた名称は畑を指していることが多い。

『まず、Gevrey‒Chambertinというフランスを代表する赤ワインを産する村がブルゴーニュ地方にあります。上記三つのワインはその村で収穫されたブドウから造られたワインです。そして、Gevrey‒Chambertin村には数十人の生産者がいます。
日本的に言えば、新潟県産のコシヒカリを佐藤さん、山下さん、伊藤さんなど、いろんな農家さんが作っているイメージです。さらに、ワインに畑の名前が付いているものは新潟県”魚沼”産コシヒカリと考えるとわかりやすいのではないでしょうか。より特定された優秀な産地(畑)ということです』

『うんうん。Gevrey‒Chambertin村には複数のブドウ栽培農家、ワイン生産者がいるから、”Gevrey‒Chambertin”とラベルに書かれたワインがたくさんあるんですね』


最初に登場したアルマン・ルソーさんのGevrey‒Chambertin Clos St Jacques

『あれっ、Gevrey‒Chambertin村のワインだけでなく、Clos St Jacquesという畑のワインもいろんな人が造っているんですか?』

『そうなんです。一つのブドウ畑に数人から数十人の所有者がいるんです。ちなみにこのClos St Jacquesは5人です。規模は違いますが、魚沼産のコシヒカリもたくさんの農家さんが作っていますよね。
そして、このアルマン・ルソーさんに限らず多くの生産者がGevrey‒Chambertinという村の名前のワイン以外にもClos St Jacquesのように畑の名前を付けたワインを造ります。さらに生産者によっては他の村にも畑を持っていることがあります』
※ブドウ畑というのは一つの区画、畑の名前は住所と考えてよい。

『一つの畑をわけ合っているということ?』

『はい。大昔は一つの畑・区画でしたが、フランス革命(1789年)によって国有化された多くの土地が新興富裕層の手に渡り、その後相続と売却を繰り返したことで一つの畑・区画を多くの所有者でわけ合う形になったんです』

先ほどのブリューノ・クレールさんのMorey Saint-Denis。この生産者がモレ・サン・ドニ村に持っているEn la rue de Vergyという畑のブドウから造られたワイン。

『ブルゴーニュではこのようにいくつかの村に畑を持っていることはとても一般的です』

『少しわかってきました。一人の生産者がいろんな村のいろんなところに畑を持っている事もある、ということですね』

『その通りです。生産者によってはどんどん畑を買い増ししていて、さまざまな村の多くの種類のワインを造っています』




さらにブリューノ・クレールさんのChambertin‒Clos‒de‒Bèze(クロ・ド・ベーズ)というワイン

『Gevrey‒Chambertinではなく、Chambertin‒Clos‒de‒Bèzeって…また何かが違うんですか?』

『はい。これまではGevrey‒Chambertin村のブドウで造られたワイン、またはGevrey‒Chambertin村にある特定の畑のブドウから造られたワインという表記でした。

こちらもGevrey‒Chambertin村にある畑なのですが、この ”Chambertin‒Clos‒de‒Bèze”という畑は特に優れたブドウを生み出すとされるGrand Cru(特級畑)として法的に格付けされているんです。そして、この特級畑のみ畑の名前だけでワインを出荷してよいことになっています。ラベルの中央にGrand Cruの文字が見られます』

『はぁ、ややこしい…。ブルゴーニュのワインは村の名前のワインの他に、畑の名前だけが記載されたものがあるということ?しかもその畑にはたくさんの所有者がいる…』

『そうなります。Grand Cru(特級)に格付けされた畑から造られたワインは畑の名前がそのままワインの名称になります。いうなれば”魚沼産”とだけ書かれたコシヒカリといったところでしょうか。ワインの名前として通用するくらい有名で歴史のあるブドウ畑ということです。そして、その畑を複数の生産者が所有していればその分だけワインの種類は増えるということになりす』
※さらに言えば、ブドウを買ってワインを造る生産者もいるので、畑を所有する人以上にワインは存在します。


3度目の登場、アルマン・ルソーさんのChambertin‒Clos‒de‒Bèze


ロベール・グロフィエさんのChambertin‒Clos‒de‒Bèze


『なるほど。ブルゴーニュには村の名前のワインから畑の名前のワインまであって、ラベルには例えば同じChambertin‒Clos‒de‒Bèzeと書かれていても、いろいろな生産者の造ったものが存在する。さらに、Chambertin‒Clos‒de‒Bèzeを造っている生産者が他の畑名のワインや違う村のワインを造っていたりする。という事ですね』

『おわかりいただけたようで』

『でも、同じ名前のワインでも生産者が違うと味わいも違うんですよね?』

『もちろんです。同じChambertin‒Clos‒de‒Bèzeでも味わいも価格もさまざまです。ちょっと違うかもしれませんが、同じ江戸前寿司でも札幌ラーメンでも四川料理でも、料理人やお店によって味も価格も違います。ワインも同様に、生産者それぞれの考え方や能力が違いますから、同じ名前(畑)のワインであっても平凡な生産者から本当に素晴らしい生産者まで存在します』

『ブルゴーニュにはワインを産する有名な村がいくつかあって、その村には特別な畑があったりする。そこから知っていく必要があるわけですね』

『最初はそこから入るのがよいと思います。基本的な村を押さえて、特級畑まで興味を持てるようになれば一端のワイン通です。ただ、ワインを造るのは人ですから、ブルゴーニュに限らずワインは最終的には”誰が造ったか”ということが一番大切になってきます』

まとめ

ボルドーは一部シャトー(生産者)に対して格付けがなされている為、生産者名主体でワインが流通しています。

一方、ブルゴーニュではワインに村の名前を表記することが一般的で、加えて畑に格付けがなされているので、ワインが村の名前または畑の名前で出荷されます。そして、どちらかといえば控えめに生産者名が記載されていることが多いのです。

また、相続と売却を繰り返してきましたので、一つの畑に複数の所有者がいること、また、いろんな生産者が他の村を含むいくつかの畑を所有していることもブルゴーニュワインの理解を難しいものにしています。




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